父が私にくれたものはたくさんありますが、
その中の一つに、「犬という友」があります。
小学校4年生の時。
父が私に、生涯最初の私の犬を連れて帰ってくれました。
対人恐怖が強く、場面緘黙症に苦しみ、友達のいなかった私に、
父が「犬」という得難い友を与えてくれました。
結婚後、生涯二匹目の愛犬も、父が贈ってくれました。
慣れない土地で初めての育児に孤独に取り組んでいた私の、
どれほどの助けに彼がなってくれたことでしょう。
言葉を超え、ただ寄り添ってくれる存在。
理屈を超え、ただ愛情と信頼をひたむきに示してくれる存在。
ありがとう、パパ。
彼らは私にとって、最高の友であり、最高のカウンセラーでした。
そんな父に、感謝と追悼を。
孤独な少年と、犬の、魂のふれあいの物語をご紹介。
絵本ではありません。薄めですが、単行本の児童書です。
魂に効く絵本 〜絵本は恋に似ている〜
http://www.mag2.com/m/0000144564.htm
2007.10.16 第20号
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『まぼろしの小さい犬』
フィリパ・ピアス 作
岩波書店
(対象年齢:小学校中学年以上)
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〜 あらすじ 〜
優しい両親とたくさんの兄弟たちの中で、
ベンはなんとなく孤立している。
「自分の犬さえ飼えたら」。
漠然とした孤独の中で、ベンは自分の犬が欲しくてたまらない。
自分の後をついてきてくれる犬、一緒に冒険や探険ができる犬、
なでてやれる犬、面倒を見てやれる自分の犬。
おじいさんの田舎の家にいるティリーみたいな。
しかし、いくら切望してみても、
大都会の真ん中でアパート暮らしをしている今の環境では
犬は飼えはしない。
味気ない現実に失望し、
ベンは空想の世界に安らぎと慰めを見いだす。
目をつぶると、
そこには一匹の勇敢なチワワが姿を現すようになったのだ。
これ以上ないほど賢く、勇敢で、忠実な犬。
ベンの、理想の愛犬。
「チキチト」という名の、チワワ。
空想の中で、ベンとチキチトは常に行動を共にする。
もうチキチトが居てくれるから、ベンは孤独じゃない。
もう本当の犬を飼わなくてもいい。
チキチトさえ、居てくれれば。
四六時中目をつぶってチキチトと過ごすようになっていたベンは、
ある日とうとう交通事故に遭う。
危うく命を落としそうになって
ベンはやっと現実の世界に引き戻され、
そしてその事故がきっかけとなりベンの家族は郊外に引っ越す。
とうとう犬を飼える環境となったのだ!
待ち望んだ、生きた本物の子犬をもらえる日。
チキチトとの現実の世界での再会を夢見るベンの前に現れたのは、
ブルブルふるえる、
チキチトとは似ても似つかぬ平凡で臆病な犬だった。
「これはチキチトじゃない!」
チキチトじゃない犬なんていらない、
勇敢でも立派でもない犬はいらない・・・
・
・
・
−−−−−−−−−−−−−−−−
「犬さえ飼えれば」。
黙って横に居てくれる存在に恋いこがれる切なさ。
ただ無言で自分を受け容れてくれる存在を切望せずにいられない
たましいの孤独
そして、
夢と現実、理想と日常のギャップを乗り越えていく
少年の心の葛藤と成長を描いた、名作。
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言葉を超え、ただぬくもりと愛で寄り添ってくれる存在の重要性。
理解なんていらない、
なにかをしてもらおうとも思わない、
ただそこに居て欲しい。
私を見てしっぽを振って欲しい。
私に駆け寄って来て欲しい。
私の横でくつろいでほしい。
そんな存在がいれば、私はそれだけで生きていけるのに。
黙って横にいてくれる存在。
私のことを無条件で受け入れてくれる存在。
私のことを大好きなんだと確信できる存在。
そのありがたさ。
そんな存在がいてくれたら、生きていける。
Stand by me.
ただ、そばにいて欲しい。
.。.・:*: ☆ .:*:・:'
しかし、そんな存在が手に入ったとき。
あなたもまた彼をそのままで受け入れる度量が試される。
ありのままの、欠点だらけの、弱い、現実の、彼の存在を。
手がかかったり、見栄えが悪かったり。
毎日毎日、世話が必要だったり
面倒だったり大変だったり。
彼の至らなさ、期待外れな点を、
批判せず、裁かず、否定せず、
ただ、認め、受け入れ、
彼に対して負う義務と責任を淡々と果たす。
ある意味、それはあきらめであり、妥協である。
受容の過程。
私は私のままでいい。
そしてまた、あなたはあなたのままでいい のだ。
臆病でいい、みすぼらしくていい、平凡でいい。
私からあなたに、先に与える愛がある。
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人は、欲しいものが手に入ったあと、
それとどのようにつきあっていくのかを学ばなくてはいけない。
それは、夢から現実へと降りてくる作業。
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これは、『くまのコールテンくん』のその後の物語だ。
※『くまのコールテンくん』
http://tamahomishio.blog69.fc2.com/blog-entry-115.html
「こんな人がいてくれたら」と願っていたそのままの人と出会った後。
「ずっとあなたを探していた」と言ってくれる人と出会った後。
切なく恋いこがれていたものが手に入った後。
王子と姫がめでたく結ばれたあと。
欲しくて欲しくてたまらなかったものが手に入ったあと。
何が起こるのか。
Boy meets a girl.
運命の出逢いのその後の、泥臭い受け入れの物語。
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誰かとの出逢いは、魔法の杖なんかじゃない。
出逢えたからといって、何も解決などしない。
あなたが手に入れたのは、ただのきっかけ。
これからたくさんの課題を、もがきながら乗り越えて、
パートナーシップを築かねばならない。
時に傷つけあいながら。
時に泣きながら。
かっこわるく。
体当たりで。
夢と現実の違い。
夢は、手が届いたとたん、現実に変貌する。
万能でもない、十全でもない。理想とはほど遠い、日常。
それを受け入れ、乗り越える困難、試練。
夢を手に入れてしまったあと、人はどう現実と折り合っていくのか。
夢が日常に降りてくることをどう受け容れていくのか。
夢を手にしたということは、その時点で、その夢は既に破れているのだ。
そのほころびを繕い、慈しみながら、感謝して、受け取る。
要求せず、批判せず、裁かず。
ただ、認め、受け入れ、
自分から先に愛を与えていく。
空想の世界で、のんきに夢を羽ばたかせる楽しみから卒業し、
現実世界で
身体を使い、汗を流し、時に涙や鼻水だって流しながら
他者と関わっていくことを引き受ける。
毎日毎日発生する、面倒な義務と責任を引き受ける。
それに見合うだけのものが手にはいるから。
それは、経験、そして成長、そして生身の温かい絆、つながり。
私は私のままでいいように、
あなたもあなたのままでいい。
臆病でいい、みすぼらしくていい、平凡でいい。
私の期待を裏切ってもいい。
あなたはただそこに居てくれるだけでいい。
私から先に、あなたに与える愛がある。
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「犬さえ飼えれば」。
黙って横に居てくれる存在に恋いこがれる切なさ。
ただ無言で自分を受け容れてくれる存在を切望せずにいられない
たましいの孤独
そして
空想の世界でふわふわと遊ぶ気ままさを手放し、
現実の日常生活の中で、
泥臭く生きることを受け容れていく
少年の心の葛藤と成長を描いた、名作。
まだまだ幼い少年は、いかにしてチキチトへの憧れと執着を手放し、
肉体を持つ平凡な犬を受け容れていったのでしょうか。
ぜひ、本を読んでみてください。
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『まぼろしの小さい犬』
フィリパ・ピアス 作
岩波書店
(対象年齢:小学校中学年以上)
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タグ:絵本・児童文学
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